中田真太郎 – NARA TEIBAN

中田真太郎

naiceの椅子
移ろう時間を宿し、暮らしと物語を紡ぐデザイン

時間の流れを受け入れるデザイン哲学

私たちの暮らしは絶えず変化しています。時間の流れの中で物や環境、人との関係は形を変え、新しい価値を生み出します。naiceは、その変化を前向きに受け入れ、椅子やソファを通じて「座る」「憩う」「語る」といった暮らしの動作をデザインすることで、日々の生活に新たな物語を紡ぎます。

「動詞のデザイン」から「名詞のデザイン」へ

私が大切にしているのは、製品そのものをデザインするだけではありません。椅子やソファを作り、修復し、新しい命を吹き込む過程そのもの――「動詞のデザイン」を重視しています。この過程で得られる知識や技術、素材の魅力を最大限に活かし、最終的な「名詞のデザイン」に結びつけるものづくりを、これまでの経験から得た知識や技術、また素材への深い理解をもとに、持続可能なものづくりを追求しています。

私自身の物語:俳優志望から椅子張り職人への道

私がインテリアに興味を持ち始めたのは、中学時代の部屋の模様替えがきっかけでした。模様替えは思春期の気分転換であり、自分の空間を自由に変える楽しさを教えてくれました。

高校時代には祖父から譲られた古いスーパーカブを、知識と工夫を凝らして「カッコいい相棒」に仕立てる経験を通じて、物を作り変える喜びを知りました。その後、大学卒業後に俳優を志しましたが、自分の本当の興味が舞台の大道具や小道具づくりにあることに気づきます。

奈良県高等技術専門校 家具工芸科で木製家具製作を学び、在学中に「椅子張り」という専門職に出会ったことが、私の人生を大きく変えました。訓練修了後は、椅子張り専門会社で多様な製作経験を積み、現在のnaiceの原点を築いています。

十人十色な暮らしに寄り添う家具

naiceの椅子やソファは、暮らしの中で「交差点」として機能します。それは、時間や人々の物語を繋ぐ橋渡し役です。どんな空間や暮らしにも寄り添える柔軟性を持ちながら、それぞれの物語を支える存在としてデザインされています。

未来へと続く物語の紡ぎ手として

naiceの椅子やソファは、ただの家具ではありません。それは「変化する暮らし」を豊かにし、新しい価値を生み出すパートナーです。職人として培った技術と想いを込めて、一つひとつ丁寧に作り上げています。

品格は、座る姿勢から生まれる。
–– 椅子張り職人が鍛え上げた、用の美。

椅子は、身体を支える道具であり、空間の品格を形づくる存在です。
私は20年にわたり、椅子張り職人として数多の名作に向き合ってきました。
手仕事によって蘇る名椅子たちは、構造、素材、仕立てのすべてに、
時代を超える「美しい用」の精神が宿っています。
その経験を重ねる中で、
「自らの感覚で仕立てるべき一脚」が輪郭を帯びてきました。

選ぶ革の張力、座面と骨格の関係、
沈みすぎず、硬すぎず、身体の重さを自然に受けとめる構造。
それらすべてに、20年の経験と責任を込めています。

この椅子は、単なる製品ではありません。
空間に静けさを与え、座る人の所作に品をもたらす、
暮らしの文化を支える道具です。

どうぞ、じっくりとお座りになってお確かめください。
その質の違いは、言葉ではなく、身体が記憶します。

「あなたの暮らしに寄り添い、未来へと続く物語を紡ぐ」――naiceのデザインは、そんな想いに満ちています。