HACHI-WARI
― 未完成に、ひとの美しさが宿る ―
好き
私の幼少期の好きな匂いは、たくさん積まれた紙の匂いでした。
そして、紙箱を作る機械の音。父が紙を断裁するリズミカルな音、母が仕上げを施す繊細な音――その響きの中に、ものづくりのリズムを感じて育ちました。紙は、湿度や季節で表情を変えます。
一枚の紙と対話するように、まるでスーツを仕立てるように形をつくる。
そんな父と母の姿が、私の“ものづくりの原点”でした。
考え
紙は古来より、書く・包む・伝えるといった、人の営みとともに生きてきた素材です。
道具であり、表現であり、記録であり、守るもの。その奥深さと可能性に、私はずっと魅了され続けています。だからこそ、私たちのブランドでは、「日常の中に、自然な美しさと心地よさを届けること」を使命としています。過剰な装飾を排し、素材の純粋さと使う人の感性で完成する。
そんな“余白のあるデザイン”を追求しています。
迷い
一方で、現代社会は効率と消費の速度が増し、紙という素材そのものの価値が見失われつつあります。「便利さ」と「美しさ」のあいだで、何を残し、何を削ぎ落とすべきか――その問いに、何度も立ち止まりました。でも、手にしたときの質感、書いたときの音、光を通すやわらかな陰影が教えてくれました。紙はまだ、心を動かす力を持っている。その確信が、次の一歩を導いてくれたのです。
見つけた
私たちがたどり着いたのは、“紙の本質を生かすデザイン”です。リサイクル紙やアップサイクル素材を選び、長く愛されるシンプルなかたちを心掛けています。持つ人の思考や創造性を引き出し、
日々の記録やアイデアの整理を、自然で気持ちのよい体験に変える。
それは、単なる製品づくりではなく、“人と素材の対話を取り戻すこと”。
無駄をそぎ落とし、本質を見つめる。その営みの中に、静かな豊かさが宿ると信じています。
好きからはじまり、考え、迷い、そして見つけた。
紙の香りと音に導かれたこの軌跡が、次の誰かの“つくる勇気”につながることを願って。
紙加工業は、一般に原紙を目的の用途に合わせて加工する業種の事を指し、印刷・製本等とは区別されます。その中の段ボール業界は原紙を段ボールシートに加工するコルゲーター業者と、段ボールシートを箱に加工、印刷する製函業者、及びコルゲーター製函一貫業者に区分されます。株式会社ナカムラは、昭和30年に一つ一つ手作りによる化粧箱や貼箱を中心とした製函業として創業。その後、最新段ボール用印刷機なども導入し、様々な業界に内装箱、外装箱を提供してきました。奈良ブランド事業に参加し、「HACHI-WARI」のブランド名で自らの製品づくりに挑戦しています。
私たちは身近にある1枚の紙から製品を作ります。とてもシンプルな素材で、とてもシンプルな佇まいです。私たちの役目は8割まで。後は、あなたらしく、あなたを表現するための道具として完成させてください。身近にあるモノだからこそ、表現できる存在として繋がりたいと考えています。インターネットやSNSなど今日の便利さは常に答えを提供してくれますが、情報過多によりシンプルな人間らしい生活は遠ざかって行くのではないでしょうか。ストーリーのあるものを手に入れるのではなく、自分でストーリーを創造していくことを大切にしたいです。あてがわれたデザインではなく、自分らしさを少し加えることにより、愛着が生まれてくると考えます。
