紀寺の家 – NARA TEIBAN

紀寺の家

江戸時代の末期から明治時代にかけての町の面影が今も残る奈良町。格子の内側から住人の息づかいが感じとれるこの町は、訪れる人々にやすらぎを与えてくれます。町家は、表から奥まで「通り庭(土間)」という土間を通し、一方に部屋を一列に並べた間取りです。奥に坪庭を置くことで、通気性と採光を向上させ、通りに面した「公」の空間と奥の「私」の空間を巧みに区分けすることにも成功しています。
約30年間、町家や古民家を改修してきた建築設計事務所が新たな挑戦として始めたのが「紀寺の家」です。

奈良の小さな町家で育った私。両親と妹二人の五人家族は、いつも八畳の座敷に布団を並べて寝ていました。勿論、自分の部屋もありません。しかし、その暮らしの中には知恵や工夫が溢れていました。
百年前に建てられた町家には、先人達が積み重ねてきた個性があります。そして現在(いま)この町家に私達の暮らし方の知恵や工夫がさらに加えられ、今を生きる町家へと進化し続けていきます。
紀寺の家は、旅の中でのひとときを町家に住まう。どこか懐かしく新しい。
その町の個性、そのお店の個性、その人の個性。大切なのは先人達が積み上げてきた進化のバトンを、次の世代へ渡すことであると考えています。私達は個性の進化を目指します。